■タイル張り外壁の剥離剥落について
最近のタイル張り外壁の剥離剥落現象は、「直張り工法」による事例が圧倒的に多くなっています。そのほとんどがコンクリートとモルタルの界面剥離であり、【コンクリート表面状態】に焦点が当てられるようになっています。剥離原因のキーワードは「直張り」「塗装合板型枠」「目荒らし」「吸水調整剤」「下地調整材」「張付けモルタル」です。
1970年代から研究開発されてきた「直張り工法」は何を検証してきたのか、その施工仕様はどのように変化してきたのか、どこに原因があり剥離剥落に繋がってきたのか?
タイル直張り工法の開発経緯とコンクリート表面処理について整理しました。
20220103 株式会社テックタイリング
年代 | タイル直張り工法開発の経緯 |
1970年~ | ■1976年全国タイル建設業協会が「タイル直張り工法に関する実験」を実施・・・・その概要は※1 ■1977年日本住宅公団(現UR)が行田団地でタイル直張り工法を採用。以降、住宅・都市整備公団では「タイル直張り」が標準仕様。 ■1977年「直張り工法の開発と施工実験」(「施工」4月号 藤井銛純) |
1980年~ | ■1985年全国タイル業協会が「陶磁器質タイルのコンクリート直張り実験」を実施 ⇒その結果を元に「陶磁器質タイルのコンクリート直張り工事標準仕様書」(初版)を発刊 ★コンクリート表面処理について:その巻末[参考](1)型枠に「塗装合板、アルミ型枠では、脱型後コンクリート表面が極めて平滑となり、タイルのずれなどが生じやすい。表面平滑さとモルタルの接着性は通常大きな差異はない(S52年に行なった当協会直張り実験参照)としている。 ■1986年「陶磁器質タイルのコンクリート直張り-施工実験と仕様の決定」(「施工」3月号 伊藤哲也) |
1990年~ | ■1997年全国タイル業協会「陶磁器質タイルのコンクリート直張り工事標準仕様書」(改訂版) 主な改訂内容は、張付けモルタルを2度塗り(1~3㎜のこすり塗り)すること。 ★コンクリート表面処理について:その巻末[参考](1)型枠に「塗装合板、アルミ型枠では、脱型後コンクリート表面が極めて平滑となる。昭和52年に行なった当協会の直張り実験では、モルタルの接着性は合板と大きな差異はなかったが、ポリマーセメントモルタルによる下こすりをしっかりと行なうなどの配慮が必要である。(5)剥離防止工法にMCR工法と高圧水洗による目荒らし工法(300N/㎜2以上)を推奨することが記載される。 |
2000年~ | ■2005年日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS19」 タイル直張り工法が初めて記載された。 ★コンクリート表面処理について:3.5.2.1現場打込みコンクリート及びプレキャストコンクリート下地 a.(4)コンクリートの表面は、はく離防止のための清掃及び目荒しなどを確実に実施することとし、その方法は特記による。 |
2010年~ | ■2010年全国タイル業協会「陶磁器質タイルのコンクリート直張り工事標準仕様書<モルタル張り>」(改訂版) コンクリート表面はMCR工法による凹凸付け、もしくは(超)高圧洗浄による表面の目荒らしを行なうものとする。 ■2012年日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS19」 タイル直張り工法について2005年版より詳しく記載された。 ★コンクリート表面処理について:3.7.2 下地処理 a.コンクリートの表面は、はく離防止のための清掃及び目荒しなどを確実に実施することとし、その方法は特記による。b.高圧水による下地処理を行う場合には、事前に試験施工を実施して下地処理後の状態を確認する。c.日常的な品質管理として、施工計画書に基づいて下地処理のプロセス検査を実施する。d.プルセス検査によって判明した不具合箇所は、施工計画書の処置方法に基づき速やかに手直しする。 |

タイル直張りの剥離界面はそのほとんどがコンクリートと張付けモルタル界面もしくはコンクリートと不陸調整モルタル界面です。一見、コンクリート表面状態と張付けモルタルの接着性に問題があるように捉えられていますが、実は目に見えない重要な要因が隠れています。剥離の特性要因図を下に示します。

建物は現場毎に設計・施工仕様、施工後環境が異なっています。仕様書内容は同じでもその施工内容は同じではありません。・・・・現場の事実を元に原因究明と対策を提案していきます。
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